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合成版式ケーソン設計マニュアル1)では、フーチングについても、俸部材の場合と同様にスターラップが有効であるとしている。筆者らが以前行った実験13)では、補強効果は認められなかった例もある。
また、防波堤用ケーソンのフーチングでは、地盤反力により分布荷重が作用する。これに対して従来のせん断耐荷力の計算式は、集中荷重を対象としている*4。この荷重状況の違いが、せん断破壊機構にどのような影響を与えるか不明である。
そこで今回の実験では、部材形状、スターラップの有無、および荷重状況を変動要因として、せん断補強効果の有無と、荷重状況によるせん断耐荷力の相違を調べた。
*1浮遊時の単位体積当たりの重量で比較すると。合成版式ケーソンの重量は、RCケーソンの約1/2となる。これは、合成部材の使用により外壁。底版の厚さを小さくでき、かつ隔壁として鋼板を使用することによる。
*2棒部材:部材長さが断面寸法に比して十分大きいスレンダーな梁部材(概ねa/d≧2.5、ここでa:せん断スパン、すなわち載荷点と支点の距離、d:有効高さ)
*3ディープビーム:高さがスパンに対して比較的大きい梁部材(概ねa/d≦1)
*4現行のコンクリート標準示力書の設計式は、集中荷重を受ける単純梁の実験および解析結果に基づいている。
2−2. 実験方法
1.5m×1×0.5mのRCブロックと、1.5m(張り出し長さ)×0.508mm(または0.408m、0.308m、梁高さ)×0.25m(梁幅)の合成版式片持ち梁から成る供試体を製作した。片持ち梁の綱板の厚さを8mmとした。梁高さを3ケースとし、各ケースについて、せん断補強鉄筋比0%と0.20%の2種類の供試体を製作した。せん断補強鉄筋比0.20%の供試体では、直径6?の異形鉄筋をU形に曲げ加工して製作したスターラップを、鋼板に125mm間隔で溶植した。
RCブロック部分を反力床に固定し、2台の油圧ジャッキとトーナメント式の治具を用いて、片持ち梁に等分布荷重を載荷した(Fig.6)。梁高さ0.508m、せん断補強鉄筋比0%の供試体については、比較用に集中荷重(載荷板の幅20cm)を載荷するケースも行った。
2−3. 実験結果
いずれの供試体も、斜めひび割れが進展して、鋼板降伏以前に破壊に到る、せん断卓越型の破壊形態を示した。梁高さと最大荷重の関係をFig.7に示す。計算値は、コンクリート標準示方書12)(6.3.3棒部材の設計せん断耐力、および12.7.4フーチングのせん断力に対する検討)により求めた。ただし計算値の安全率は1とした。すなわち、材料強度の値として材料試験での実測値を用い、部分安全係数をすべて1.0とした。
スターラップのない供試体について、等分布荷重による実験結果は計算値の1.45〜1.89倍であった。比較用に集中荷重を載荷したケースの最大荷重は27.0tf(計算値は24.9tf)であり、等分布荷重の方が集中荷重より50%ほど大きなせん断耐力となった。ただしせん断破壊機構に関しては載荷方法による影響はほとんどなかった。このことから、等分布荷重を受ける場合、示方書の式は、せん断強度を過小評価することがわかる。これは、現在までほとんどのせん断載荷実験が集中荷重載荷により行われており、示方書の式はそれらの実験結果を基にしているためである。現実にはフーチングのように分布荷重を受ける場合も多く、今後さらに様々な荷重の分布状況を再現した実験の蓄積が必要である。ただし設計的には集中荷重で検討しておけば安全側となる。
スターラップの有無による最大荷重の差は、12.1tf〜20.9tf(計算では7.3tf〜17.2tfであった。張り出し長さと有効高さの比を3〜5とし、せん断補強鉄筋比を0.20%とした今回の実験では、前回の実験13)と異なり、せん断補強効果が認められた。今後実験結果をより詳しく解析し、せん断補強効果が得られる条件を明確にしたいと考えている。

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Fig.6 Loading Setup

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Fig.7 Comparison of Predicted Measured Shear Capacities

 

 

 

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